手品「システム」
当ブログは、自閉スペクトラム症の当事者である僕が、いつも見ている世界をできるだけ詳細に言葉にすることで、皆さんに他者の価値観を鑑賞していただく試みです。
この記事は、Amebaブログのリメイクです。
今回は趣味のお話。音楽の記事は結構多く書いてきたけれど、僕、小さい頃から手品も大好きなんだよね。何に対しても不思議なことがあると原理を知りたいと思う性格だから、マジックにも勉強熱心だったもんだよ。トランプ一組だけで魅せるクロースアップマジックが持つ、非現実的でクラシカルな雰囲気は童心を揺さぶる魅力があるんだよね。
手品をやることで、指先のテクニックや記憶力、発表やプレゼンテーションの能力などが向上するから、脳を鍛えることもできて、ご老齢の方や子ども向けの教室なんかも、最近はとても人気なんだよ。みんなもマジックしてみたいかな?
しかし、手品の練習も楽しいかもしれないけど、とりあえず練習なしで「人を驚かせる体験」もしてみたいよね。手品のタネって基本的に
- テクニックを使うもの
- 錯視効果やギミックなどを使うもの
- 数理トリックを使うもの
に分けられるような気がするんだけど、今回はブログを読むだけで、練習せずにすぐできる「数理トリック」の代表として「システム」を解説してみるよ。
数学教育に関心があるものとしては、手品×数学のちょうどよい部分が発揮できる領域だと思えるんだよね。数学的見方・考え方についても面白さを感じてくれたら嬉しいな。
それじゃあ、一緒にやってみよう!
システムの意味と使い方
システムとは、カードの順番に規則性を付けて、並び順を覚えるためのルールのことだよ。バラバラにしたカードを広げて、見ただけで52枚の順番をすぐに覚えられる特殊能力があるならそれでいいんだけど、さすがに無理だから規則性を付けて覚えるんだ。覚えていれば、カード当てなどのマジックを簡単に行えるよね。
語呂合わせみたいなこと?規則性があるとはいえ、52枚も覚えられるかな…
大丈夫。ネモニカスタックに代表される、52枚のカードをすべて覚えるメモライズドデックなんてものも確かにあるんだけど、基本的には、「あるカードの次が何のカードか」または「そのカードは何枚目にあるか」や「その枚数目のカードが何か」をわかるようにするための単純な計算ルールのことを指すからね。
また、今回の記事では、スートを
♢ ダイヤ :d
♧ クラブ :c
♡ ハート :h
♤ スペード:s
として、ランクの10は T、他はそのまま書くことにするよ。
(スートは四つのマーク、ランクは数字のことだよ)
これを使って、カードの名前を ランク/スート という風に表記する。
つまり、スペードの3は 3s、 ハートのジャックは Jh
みたいな感じで書くから、慣れておいてね。
でもさ、マジック中って結構デック(山札)を混ぜちゃうイメージがあるけど、そうするとシステムは意味がなくなっちゃうんじゃない?
まあ、そうなんだよね。でも、枚数目と対応が取れるシステムじゃなく「次のカードが計算によって何かわかる」ってタイプのシステムなら、一番下(ボトム)のカードも“次のカード”が一番上(トップ)のカードになるっていう、環状の設計をすることで、カット(デックを二つに分けて上下を入れ替える操作)はいくらしても平気になるよ。
そうか。カットを一度すると真ん中あたりで分けられて、ボトムカードの下にトップカードが来るもんね。何回繰り返したところで「次のカードが何か」っていう全体の並び順は変えないんだね。
ただし、カットだけだと物足りなくて、もっと混ぜているように見せたいと思う人は、シャッフルしたフリ(フォールスカットやフォールスシャッフル)を練習してみると、マジックのクオリティがグッと上がるよ。まぁ、なかなかテクニカルで難しいと思うけどね……。参考に僕の動画を載せておくね。
サイステビンスシステム
システムのなかでは一番有名だと思われるサイステビンスシステムを紹介しよう。
これは新品の状態から、一定のシャッフルによってこの状態にすることもできたり、上級者でも使うことのある定番システムだから、これから考えていく様々なシステムの基礎になるから、しっかり意味を理解してね。
サイステビンスシステムAd 4c 7h Ts Kd 3c 6h 9s Qd 2c 5h 8s Jd
Ac 4h 7s Td Kc 3h 6s 9d Qc 2h 5s 8d Jc
Ah 4s 7d Tc Kh 3s 6d 9c Qh 2s 5d 8c Jh
As 4d 7c Th Ks 3d 6c 9h Qs 2d 5c 8h Js
よく見ると、13枚おきに同じランクのカードになっていることがわかるね。このサイステビンスシステムの規則性はとっても簡単。
- スートは d→c→h→s→ d→c→… と繰り返す。
- ランクは +3 ずつ増える。(13を超えると-13する)
スートの並び順は、別に一枚ずつ出てきたらなんでもいいんだけど、このダイヤ、クラブ、ハート、スペードの並びはダクハス、ダークホースって覚えられて好きだから僕はよく使っているよ。
また、3ずつ増えるというのは、1(A)の次は4、次は7、次は10、次は13(K)…って感じで、増えているのがわかるかな。ただし、13の次は16だけど、これは13を超えてしまうから、16-13で3にするということ。
これは数学的な言い方をすれば、13を法として公差3の等差数列になるように並べるということだね。これもランクの総数である13回の間にバラバラのカードが全部出てきて、きっちり一周するような順番になっていればなんでもいいから、公差は13と互いに素なら何にしても大丈夫だよ。(13は素数だから何にしてもいいね)
なるほど。同じように、スートの周期4とランクの周期13も互いに素だから、どんな公差にしたところで、しっかりと被ることなく52枚のフルデックを一周できるんだね。簡単だけど頭のいいシステムだなぁ。
このシステムを使えば、一枚上のカードを見てしまえば、その下のカードが何なのか簡単にわかるでしょう?
例えば、適当に分けたところで上のカードは見てしまって、その数字に3を足して、ダクハスで次のマークを考えれば、裏向きのままの次のカードを透視できてしまう。もう立派なマジックだね。
弱点の考察
すごいサイステビンスシステムだけれど、実はデメリットもあるんだ。
メリット
- とても覚えやすい
- カット可能
- システムを組むのが簡単
デメリット
- 規則性がバレやすい
そもそも、システムを使うのは「デックを相手に堂々と見せたいから」なんだよね。もし一度も表を見せないつもりなら、新品の状態の並び順みたいに、もっとわかりやすく並べたっていいでしょ。つまりは、広げて見せてもぱっと見では規則性がわからないようにしないといけない。
だけど正直、サイステビンスシステムは規則性が簡単すぎるから、結構バレてしまうことが多いんだよ。僕もこのシステムは、気合の入ったマジックを行う前のデモンストレーションで「こんな“システム”なんてものがあるんですよ。今日はもっとわからなくなるように、ぐちゃぐちゃに混ぜてしまってください〜」みたいな軽い種明かしをする導入として使うことが多いかな。
そうすると、頭を使いながらマジックを観ようと意識できるから、より不思議さを演出できる気がするね。でも、もっとバレないシステムも知りたいよ。
そうだよね。だから、ここからは少しバレにくくする方法を考えてみよう。
語呂合わせで解決
よく考えてみると、システムが等差数列である必要は特にないよね。
A,4,7,T,K,3,6,9,Q,2,5,8,J(,A,4…)
という並びを覚えるのに、サイステビンスシステムでは、等差数列という規則を使っただけだもん。だから、13枚を語呂合わせなどにして覚えられる方法を自分で考えてみるのも面白いよ。
有名な語呂合わせで言うと「極道親父システム」というのがあるから紹介するね。
「極道親父を兵隊にしろ奥様一悩み」と、何回か口に出して言ってみよう。
極道親父を兵隊にしろ奥様一悩み
ごくどー親父を兵隊にしろ奥様ひとなやみ
5, 9, T, K, J, 2, 4, 6, Q, A, 7, 8, 3
おお、3回目で数字に見えてきたね。
親父をキング、兵隊をジャック、奥様をクイーンにしているところに注意だよ。
だけど問題なのは、等差数列であることよりも断然、赤と黒が交互で並んでしまうことだよね。これは、かなりの妥協になってしまうけど、スートだけバラバラにするという方法もある。
つまり、サイステビンスシステムでダクハスの規則だけ抜いて並べておく感じ。そうするとランクだけを知ることができて、1枚引かせてから、表向きに広げて他3枚を瞬時に見つけて消去法で当てるみたいなカード当てもできるよ。
えー、でもなんか、表を見ちゃうのはちょっと嫌だな〜
確かに。やっぱりもっと改善する方法も考えたいよね。
じゃあ、もう少し複雑な規則を設けてみよう。
オリジナルシステム「国は素人」
赤と黒が交互に並んでしまうことを解消する方法として、特定のカードを交換するなんていう方法はかなり簡単に解消できる方法として知られているよ。例えば、5678のハートとダイヤは、5678のスペードとクラブと交換するみたいな感じ。そうすると、その数字のところでは赤と黒の順序が狂うから視覚的には規則性を感じづらくなるよね。
僕は次のカードがわかるってタイプのシステムではなくて、特定のカードが何枚目にあるのかを計算できるシステムを作ってみたことがあるんだ。素朴な作り方だから最初にそれを紹介するね。
国は素人Qs 2s 8h 4s 6h Ts Kd Qh 2h 8s 4h 6s Th
Ah Jh 5s 9h 7s 3h Kc As Js 5h 9s 7h 3s
Qc 2c 8d 4c 6d Tc Kh Qd 2d 8c 4d 6c Td
Ad Jd 5c 9d 7c 3d Ks Ac Jc 5d 9c 7d 3c
とりあえず並び順はこんな感じ。実際に並べてみた写真も見てみて。

どうだろう。注意深く見れば規則性がありそうだと気づけるかもしれないけれど、サイステビンスシステムよりはかなり難しいんじゃないかな。
合言葉は「国は素人:Q2846T」ルールは次の通りだよ。
- キングは例外で、dchsの順で7,20,33,46枚目にある
- クラブかダイヤなら +26
- 奇数なら色を反転させて +13
- (選んだカードが5678ならば、色を反転させて考えて)
赤なら +7 - (選んだカードが奇数ならば、13から引いた値として)
Qなら+1、2なら+2 、8なら+3、4なら+4 、6なら+5 、Tなら+6 - 合計の値の枚数目にそのカードがある
3の奇数による色反転は「奇数なら反対!」って感じがしてわかりやすいかなと思って入れたんだけど、面倒だったらなくても十分だと思うよ。
条件を一つずついくつか確認するだけでその枚数目がわかるっていいね。
前半と後半で、使うスートを分けてしまっているけれど、赤と黒で分けてはいないから、見た目ではなかなか気づきにくいかもしれない。
それから、このシステムでは、1〜26枚目と27〜52枚目でそれぞれがメイトカード(色とランクが同じカードの組)になっているから、一回パーフェクトシャッフルをするとそれぞれが揃うようになる。だから、システムを使うマジックが終わったら、メイトカードを使うマジックに繋げられるというのも少し考えていたりするんだ。
それに、パーフェクトシャッフル2回で、26,27,28,29枚目にキングが揃うから、パーフェクトシャッフルに自信がある人は、キングを出したり、キングのパケットを使ったマジックに繋げるなんていうこともできるよ。
練習と考察
ちょっと計算の練習をしてみよう。
(1) スペードの6
クラブ・ダイヤでもなく、奇数でもない +0
5678は色反転→赤なので+7
6なので+5 よって、12枚目
(2) ダイヤの5
ダイヤなので+26 奇数なので+13
そして、13-5=8 色を反転させて黒の8
5678は色反転→赤なので+7
8なので+3 よって、49枚目
(3) 38枚目のカードは何か
26+7+5なので、
ダイヤ・クラブで赤く、Q2846Tなので 6
しかし、6は色が反転するので、クラブの6
うーん、慣れないとなかなか難しいかもな。単独のカード当てというよりは、次のマジックに繋げることを想定しているシステムだね。
メリット
- 見た目があまり怪しくない
- 完璧に何枚目が何か把握できる
- 次のマジックに繋げる工夫がある
デメリット
- カット不可
- 人によっては計算で頭が痛い
ただ赤と黒を交互に並べたくないってだけでいいなら、52枚のカードにそれぞれ、0から51までわかりやすい番号を振って、1枚ごとに52の法の下で +7 していく(52と互いに素な数ならなんでも大丈夫)みたいな方法でもできるね。
スートも利用する最強システム
だけどこれまで紹介したシステムは全部「Jの次は必ず5が来ているなー」みたいに、並びが簡単に循環してしまうのが、少し怖い気がするんだ。これはランクの規則と、スートの規則を分けて考えてしまっているからだよね。
そこで最後に、ランクとスートによる二変数関数として、ランクもスートも循環させないままに規則性を作り出す最強のシステムを紹介しよう。
ブレイクスルーシステムAs 6c Ac 4s Qd Qc Kh 3h 9c 7d 2d 5h Ks
4c Th Ts Jd Tc 9d 6h 2h 7c 3c 8d 4h Js
Kd Ad 3d 7s 5c Qh Ah 5d Jc Jh Qs 2s 8h
6d Ks 2c 6s 3s Td 8s 7h 4d 9s 9h 8c 5s
これを見ただけで、規則性を感じ取れる人がいたとしたら、それはもう凄すぎると思う。変数が増えると直観は極めて働きづらくなるものだね。
スートは、ダイヤ=1, クラブ=2, ハート=3, スペード=4 とする。
ここで、前のカードのスートが m 、ランクが n であるとして、
次のカードの、スートとランクが何になるかの規則を与える。
- ランクは、2n+m を13で割った余りとする。
(0のときはKとする) - スートは、1で選んだランクよって決める。
A,2,3 のとき、スートは4を法として m
4,5,6 のとき、スートは4を法として m+2
7,8,9 のとき、スートは4を法として m+3
T,J,Q,K のとき、スートは4を法として m+1
ちょっと難しいけど、要するに 2n+m を計算して
それが、1,2,3ならスートはそのまま
4,5,6なら色が同じ別のスートに
7,8,9なら1つ前のスートに
10以上なら1つ後のスートにするってことね。
スートの情報も含めてランクを決めることで、かなり複雑になったね。
これが本当にすごいのは、ちゃんと 5s の“次のカード”が As になっているから、カットも可能になっているということ。そういう意味ではサイステビンスシステムの上位互換かもしれないね。
これは、最強って感じするよ。
考えることが多いから、計算に慣れる必要があるけれど、一度自分で計算しながらシステムを組んでみると、計算の仕方が覚えられる気がするよ。
メリット
- 見た目が完全に怪しくない
- カット可能
デメリット
- 「次のカード」しかわからない
- 人によっては計算で頭が痛い
というわけで、いろいろなシステムを紹介したけれど、面白かったかな?
僕としては、かっこいいマジックができるようになるという魅力がありながら、互いに素であることの必要性を考えたり、色々な数学的活動に繋げられるテーマだと感じているよ。もしお気に入りのシステムを見つけたり、改善案なんかを考えられたら、ぜひ教えてね。








