流離う耽譚ショート

樅木 霊(もみのき れい)の掌編小説集。観察力と想像力で日常と非日常を反復横跳び。愛おしい物語の種を磨き上げ、たった1600文字で「名もなき哀れ」を描き切る。物書きとしての新たな表現に手を伸ばす挑戦と実験の記録。あるいはトレーニング。

流離う耽譚ショート

路地

路傍の花はアスファルトに明瞭な影を落とす。
流離う耽譚ショート

幻視痛

不思議な夢に魘されていた。天井に時計が貼り付いている。
流離う耽譚ショート

リテイク

みんなと写真を撮るとき、わざと目を瞑ってみた。
流離う耽譚ショート

おぶわれて夏

忽然と姿を消した醜女は、破裂音と共に厚化粧を曝け出した。
流離う耽譚ショート

窓外の素描

空は静止画でなく動画である。
流離う耽譚ショート

街角サインポール

店の前にあるトリコロールの円柱は年季が入っている。
流離う耽譚ショート

麒麟

「宇宙人と人間との子は、平民としてよいと思うかい。」
流離う耽譚ショート

ヒナちゃんが大好き

ぼくはヒナちゃんが大好き。
流離う耽譚ショート

永遠なる心

娘を充電ドックに繋いでスリープさせた。
流離う耽譚ショート

朝の泉

糞をしているとき、歯磨き粉の溶け出した液体が口から漏れて亀頭に垂れた。
流離う耽譚ショート

耳を診る

先生、お助けください。どうもこの耳の形状が気色悪くて仕方ありません。