まるで青春、まるで等間隔に並ぶ憂鬱

クリハロ歌集(一)



学童が褪せない和歌の煌めきを古き端末開き刻んだ

踏切と列車の和音鳴り止めば花の季節は一つ進めり

大丈夫、山菜ごはんは三歳じゃないお姉さんも食べられるから

黄緑のクレヨンの指あちこちにその小ささよその激しさよ

校庭でバズってたのは幼虫を気持ち悪がる春っぽい声

抜け出した校舎の外は水の中。着替えなくても良いと思えた。

雨上がり、生きる意味を知る。びしょ濡れの雲間を縫って光は届く。

宿題のための絵日記未だ先の「  がつ  にち」隙間を埋める

解答に ≠0 がなくノートの隅で広がる無限

わからない者同士でも寄り添って唱えたアイウルラエレリオロ

六つ目の完全数を喰う波を恐れてパラソルの下に居る

いつか見た手品に似せて掌で不倒翁なるチュッパチャップス

「まあいいか」キルケゴールを読んだとき感じ取らせて頂きました

俳人も来たと知らせる爽しい碑その奥にはVaundyの看板

青空へ翳すブドウは電線で蝉時雨模す全音符F

スナックのカウンターの児メンソール煙草のママに教わる漢字

大好きの支払いがあり手付かずの自由研究代行は父

追憶は涼夜の逝くを乗り越して帷幕の隙間ひかりの裁き

衣装棚がさがさ前へ出す半袖シャツの匂いは明日の教室

躓いたマスク焼けした少年よ間違うことはすべて正しい

確定でダブルボギーの思春期にルースインペディメントの明日

車両には塞がない耳四つだけ変声期前おしゃべり楽し

印刷の8K<近眼の576MP

憧れをずっと遠くに持つ君に見つけ出したいクリプトナイト

セリフ例「やあ、ホマラーノ。僕らにはお仕事がある。きっと偉大な。」

生きたいと言えないままで死にたいも言えないのなら痛がらないで

波の花かれぬ友らに光るゆふ髪のぬれけれ運動会へ

決められた帽子の色で争って誰かが勝った誰もが負けた

元素表に置いたルークよ夜長からペガスス座まで突き進んでけ

この世をば我が世とぞ思え望月よ宇宙際タイヒミュラー理論

手に取れば今も賢者になれるはずハードカバーのハリーポッター

席替えで嘘をつきます「見えます」と隣のきみに借りたいノート

生きている躍動・鼓動・衝動は リメレンスだけ リメレンスだけ

秋雨が作る鏡に赤染の君の左手重なる右手

北風と抜けるつもりがメンチカツ贖罪で買う君のハムカツ

反対の手を繋ぐとき横にいて同じ手のとき向き合っている

親指があの六桁の代わりなら薬指にも劣らない痕

草臥れたランジェリーを大事そうにニトリのカラーケースにしまう

怪我したと聞いた瞬間なんとなく愚痴られるって悟ったある日

色々と考えたんだと切り出され五億年だけ瞳を閉じる

青春にこの世の全部があるって噂、まずは信じたフリをしてみる

のり弁ののりが好きならのりだけ食べる。その方がちゃんとしている。

十二人減らしたLINE友だちに君が入っていませんように

頭まで被る布団の中で会う彼の幻聴じみた「逃げるな!」

歪みつつ眼鏡の檻を飛んでいる鳥が見るのは自由なわたし

深雪を蹂んだらあそこまで行けて幼き夢と再会できる

炬燵で寝る・塩をそのまま舐める・夜中にゲームする・明日休む

オンライン会議は飽きてしまったしキーボード撫であみだくじする

結論なんて興味ないから微温いハイボールと死ぬまで話そう

おつかれと寝転ぶソファで思い出す馬車馬だった青春の俺

最後までご覧いただき、ありがとうございました!

感想などはTwitterで受け付けております。#樅木霊